青木鐵夫
はじめに
気がつけば藤枝静男についてあれこれ書かせてもらってきた。「藤枝文学舎ニュース」第3号(1992年5月)の「藤枝静男の美術随想」がその最初である。当時私の手元には藤枝静男の本は殆どなかった。寄稿を依頼され、知人のEさんに藤枝静男の随筆集を何冊か借りた。一夜漬けの原稿であった。しかし、藤枝静男を私が意識するきっかけとなる。
「藤枝文学舎ニュース」は「藤枝文学舎を育てる会」の機関紙である。「育てる会」は、小川国夫が少年期を過ごした家屋を文学資料館「文学舎」として復元する運動母体として結成された。設立は1983年6月である。小川国夫が少年期を過ごした家屋の復元は残念ながらまだ実現していないが、2007年(平成19年)9月、藤枝市文学館が開館した。育てる会設立から24年を要したことになる。
私が藤枝静男と深く関わっていく経緯については、「とり憑かれてしまった」に書いた。また「藤枝文学舎ニュース」に「いろいろ田紳有楽」を連載させていただいたことが、一層その関わりを深くさせた。連載は、ニュースの編集者Uさんにそそのかされてのことであった。受動的にはじまったともいえる私と藤枝静男のつながりは、それから途切れることなく続いている。
私は版画家を自称している。藤枝静男以外の作家の作品は殆ど読んでいない。文学の門外漢である。そんな私をさえ惹きつけて止まないのが、藤枝静男である。以下藤枝静男について書き散らかしてきたいくつかを、紹介させていただきたい。蓮實重彦も云うように、それらはすべて藤枝静男へのラブレターである。なお書いているモチーフに重なりがあるが、視点を変えてということでお許しいただきたい。
Charles de Tolnay 著『ボッシュ画集』
|